この記事では『障害者枠で就職するメリットとデメリット』について紹介する。
障害者枠で就職するのか。あるいは、一般枠で就職するのかについて悩むことがあるのではないだろうか?
実際、筆者である僕も就職する時期になって障害者枠での就職か、または一般枠での就職かを迷った1人だ。
僕はどちらの選択もしなかったわけだが….。笑
ただ、それにも大きな理由がある。それは…またどこかで記述することにする。
さらに、このRepeLで記事を共同執筆している黒田は、障害者枠で就職した1人だ。
もちろんこの記事の内容には黒田の意見もガンガン入ってる。笑
実際の体験談も満載に含め、リアルな情報を届けたい。
もくじ
そもそも障害者枠での就職とは
さて、そもそも障害者枠での就職という言葉を聞いて「ん?どういうこと?」と思った人もいるだろう。
障害者枠とは、障害者手帳を所持している人限定の就職枠のことであり、一般には障害者雇用と呼ばれている。
もちろん、障害者手帳を所持しているからといって障害者雇用枠を必ず利用する必要はない。
一般枠での就職ではなく、障害者雇用枠での就職をしたい人だけが利用すれば良い制度なのだ。
障害者枠での就職、障害者雇用とは?
障害者雇用とは、障害を持つ人が能力や特性に応じて働くことができるようにサポートする制度のことだ。
この障害者雇用は、「障害者雇用促進法」という法律によって成り立っている制度なのだ。そのあたりをもう少し詳しく確認していこう。
◼︎障害者雇用促進法とは
「障害者雇用促進法」とは、正式名称を「障害者の雇用の促進等に関する法律」と言い、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、職業リハビリテーションの措置等を通じて、障害者の職業の安定を図ることを目的とする法律です。
参考:日本の人事部
さて、上記のサイトから「障害者雇用促進法」の定義を引用させて頂いた。
しかしながら、少しわかりずらいと思うので、噛み砕いて説明する。
要するに、障害者雇用促進法とは障害者の職業の安定を図ることを目的として作られた法律なのだ。
現代の資本主義社会では”生産性”が高いことが仕事をする上で重要な評価指標になっている。
しかしながら、障害や病気を抱える人は、その障害や病気が原因で資本主義社会が求める生産性を担保できない場合がある。
そういった資本主義の合理的な考え方から守ってくれるのがこの法律だ。
では、具体的に障害者雇用促進法がどのような形で私たち障害者を守ってくれるのかを確認したい。
◼︎企業が守るべき法定雇用率
あなたは「法定雇用率」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。
もしかすると、成人に達した人であれば一度は耳にする機会があったかもしれない。
法定雇用率とは、従業員を100人以上抱えた企業が50人の従業員につき最低x%の障害者を雇わなければならないという制度のことだ。
詳しくは、下の図を確認して欲しい。
このように、一般企業の場合は従業員50人以上に対して2.2%、地方公共団体の場合は2.5%、都道府県の教育委員会の場合は2.4%の障害者を雇う義務があるのだ。
もし従業員が100人以上いるにも関わらず、規定値の障害者を雇用していない場合には、国から罰金が課されることになる。
一方で法定雇用率を上回って障害者を雇用している場合には、納付金が企業に支払われる仕組みだ。
このような制度の下で障害者の雇用が守られているのだ。
※もし法定雇用率がどんな制度なのかについて、もう少し知りたい方がいたらぜひこちらの記事(『障害者を雇用する義務、法定雇用率とは?』)を参考にして欲しい。
障害者枠で就職するメリットは?
さて、障害者枠での就職についてはご理解頂けただろうか。
このトピックでは、障害者枠で就職するメリットについていくつか紹介したい。
できることを任せてもらえる
RepeL共同執筆者である黒田にヒアリングしたところ、「自分はそこまでスキルがあったわけではないけれど、できることを任せて貰えた」という言葉がまず最初に出た。
一般枠で就職した場合には、できないことにも挑戦しなければならないこともある。
一方で、障害者枠での就職となるとできることを任せて貰え、自分のペースで仕事ができるようだ。
バリアフリーが整備されている
こちらもRepeL共同執筆者である黒田にヒアリングした。
彼は義足を装着し普段から松葉杖を利用しているため、オフィス内がバリアフリーかどうかを非常に重要視するそうだ。
もちろん、他の障害を持っている人にとってもオフィス内がバリアフリーかどうかは重要なポイントだろう。
その点で言うと、障害者枠で採用している会社の多くがオフィスにバリアフリーを採用している。
一般枠での就職を考えている場合には、もしかしたらオフィス内がバリアフリーでない可能性があるので、ぜひ注意してほしい。
障害者枠で就職するデメリットは?
障害者枠で就職するメリットを紹介したので、少しだけデメリットにも触れておきたい。
年収・給料が安い
障害者雇用枠で就職をすると一般就職枠に比べて年収や給与が安くなる傾向がある。(参考:『障害者雇用を利用して入社した場合、給料が安いって本当?』)
厚生労働省の平成25年度アンケート調査では、以下のような結果が出ている。
身体障害者 | 通常(週30時間以上) | 25万1千円 |
20時間以上30時間未満 | 10万7千円 | |
20時間未満 | 5万9千円 |
知的障害者 | 通常(週30時間以上) | 13万円 |
20時間以上30時間未満 | 8万7千円 | |
20時間未満 | 3万5千円 |
精神障害者 | 通常(週30時間以上) | 19万6千円 |
20時間以上30時間未満 | 8万3千円 | |
20時間未満 | 4万7千円 |
日本人の平均給料が約33万円であることと比べた場合、障害者雇用で入社した際の平均給料が低いことがわかる。
実は、給料が低いことに関しては黒田の怒りのチャットも紹介しよう。笑
普段怒らない黒田から怒りを感じた瞬間だった。笑
障害者枠で就職する方法
このトピックでは実際に障害者枠を利用して就職する方法について4つ紹介する。
1.企業ホームページから応募
2.ハローワークに相談
3.就職エージェントに相談
4.合同面接会に参加
企業ホームページから応募
まずはじめに障害者枠で就職しようと思った場合に思いつくのが企業の障害者雇用枠専門サイトから応募することだろう。
自身の経歴や面接力に自信のある方はこの方法で応募するのが最も良いだろう。
しかしながら、自信の経歴や面接力に自信が無い方はハローワークや就職・転職エージェント、合同説明会へ参加し相談するのが良いだろう。
ハローワークに相談
企業の障害者雇用枠専門サイトからの応募の次に多いのがハローワークでの相談だろう。
もちろん、ハローワークのスタッフは優秀なので、親身になって就職相談に対応をしてくれて、就職先の紹介をしてくれるだろう。
しかしながら、ハローワークに相談する事が必ずしも良いとは限らないので注意が必要だ。
なぜならば、ハローワークの求人は良いものばかりではない。
むしろ、誤解を恐れずに言うと”求人掲載費を出したくない“という広告主が求人を出す場所がハローワークとも言える。(※ もちろん全ての求人がそうではないが、ハローワークは求人掲載費が無料)
そのため、仕事内容や仕事環境にこだわりたい人であれば就職・転職エージェントに相談をした方が良いだろう。
就職・転職エージェントに相談
結論から言うと僕は就職・転職エージェントを利用するのが最も良い方法だと思っている。
基本的に障害者が就職を考える時に相談できる場所は、ハローワークか人材紹介会社(就職・転職エージェント)、あるいは合同面接会の3つだ。
ハローワークか就職・転職エージェント、合同説明会のどれを利用するのかということだが、やはり就職・転職エージェントに相談するのが良いだろう。
先ほども少し触れたが、ハローワークであれば求人掲載費が一切掛からない。
なので、採用にお金をかけたくない企業がハローワークに求人を出す傾向がある。
一方で、人材紹介会社(就職・転職エージェント)経由で採用を考えている企業の場合には、人材紹介料(相場は年収の30%〜35%程度)を払う必要がある。
つまり、お金を掛けてでも障害者を採用したい会社の求人が揃っているのだ。
そのため、就職・転職エージェントの利用は非常に良い手段だといえる。
※ 就職・転職エージェントとは?こちらの記事をチェック!
合同説明会については参加するのも良いかもしれないが、やはりあまりお勧めできない。
その理由を説明しよう。
合同面接会に参加
合同面接会についてはRepeL共同執筆者の黒田が実際に就職活動をしていた時に何度か参加したことがあるが手応えを感じなかったそうだ。
理由としては面接の質が悪いこと。
合同面接会は大きな体育館や公民館で行うのだが、何百人も集まってる中で書類選考もなしに流れ作業のように面接(1人あたり5〜10分程度)をするので、当然一人一人をじっくり選考する時間はない。
結局、履歴書だけで判断されて人間性をみてもらえていないんじゃないか?と黒田は不満を口にしていた。
しかしながら、会場内では面接を受けたい企業のブースに並ぶ慣例になっているので、時間が許す限り何社でも面接を受けられるため面接に慣れる(練習になる)ことができるメリットがあることは言及したい。
各機関の利用方法
さて、前のトピックでは障害者枠で就職する方法について紹介したので、このトピックでは実際に各機関を利用する際の方法を紹介したい。
ハローワークの利用方法
ハローワークに相談に行く場合、全国どこのハローワークに行っても問題ないのだが、お住いの地域または働きたい地域のハローワークに行くのが良いだろう。
予約不要、服装自由、必要な物もないので気軽に相談しに行けるのが良い点だ。
ハローワークに着いたら求職申込書を記入(初めての場合のみ)してハローワークカードを発行してもらい、一般窓口、障害窓口、総合窓口があるので自身にあった窓口で相談してみると良いだろう。
一般枠か障害者枠で悩んでいる場合には、総合窓口で相談すれば親身に相談に乗ってくれるはずだ。
転職エージェントの利用方法
転職エージェントについては以前にも執筆したことがあるので、少し長くなってしまうが登録から就職までの流れ、そしてオススメの転職エージェントを3つ紹介したい。
まずは登録から就職までの流れを9ステップにまとめたのでみてほしい。
STEP1:登録する
STEP2:担当エージェントから連絡が来る
STEP3:面談を実施
STEP4:求人を紹介して貰う
STEP5:職務経歴書・履歴書を添削して貰う
STEP6:求人に応募する
STEP7:面接対策をして貰う
STEP8:企業との面接試験
STEP9:内定
では、実際に利用すべきおすすめの転職エージェントを3つ紹介する。
※ 転職エージェントは最低でも2社以上の登録が個人的にはおすすめ。なぜなら1社だけの登録になると「担当エージェントとの相性が悪い」場合に回避できないからだ。
dodaチャレンジ
dodaチャレンジは、日本最大級転職エージェント「doda」を運営するPERSOLグループの障害者の転職に特化したサービスだ。
強みとしては、圧倒的求人数だろう。
さらに「doda」で紹介している会社の非公開求人を多く持っているはずなので、より自分に合った企業へ転職しやすくなるはずだ。
もしdodaチャレンジへ相談したい!と思う方がいたらこちらのHPから面談の申し込みをして貰いたい。
アットジーピー(atGP)
障害者転職サポート実績業界No.1、国内最大手の障害者専門転職エージェントであるアットジーピーはまず間違いなく信頼できる転職エージェントだ。
運営会社は、東京にオフィスを構える株式会社ゼネラルパートナーズ。
実際に僕自身もゼネラルパートナーズとは縁があり、本社まで訪れた事がある。
その際にも、社員全員が気持ちの良い挨拶をしてくれたのをよく覚えている。
社長自身が「障害者差別」という課題を解決したいと強く願っている一人でもある。それは、会話をしている中でいつも感じていた。
アットジーピー(atGP)を利用すればまず間違いなく親身になってくれるだろう。
もしdodaチャレンジへ相談したい!と思う方がいたらこちらのHPから面談の申し込みをして貰いたい。
エージェントサーナ
エージェント・サーナは、障害者の就労支援26年の実績を持つ、株式会社イフが提供する障害者のための職業紹介サービスだ。
強みとしては、高い内定率とスピード感ある対応だろう。
エージェント・サーナを利用した多くの人が面談から二ヶ月以内に内定を得ている。
26年間、真摯に向き合ってきたからこそ得られた経験とノウハウがあるので、充実したサポートが受けれるはずだ。
もしエージェント・サーナへ転職の相談をしたい!と思う方がいたら
こちらのHPから面談の申し込みをして貰いたい。
合同面接会の利用方法
まず、合同面接会は大きく分けて2つあるので確認したい。
1つ目は、ハローワークが主催している合同面接会で、事前に参加申込みをする場合はハローワークに行き事前申込書を記入しよう。
合同面接会の当日に必要な書類は、障害者手帳等のコピー、履歴書、職務経歴書、この3点は面接を受ける数だけ用意する必要があるので注意してほしい。
事前申込みではなく当日参加の場合には、参加申込書及びハローワークカード(持っている場合)が必要になるので忘れずに用意しよう。
参加申込書や合同面接会の情報については県のホームページやハローワークのホームページから確認できるので是非参考にしてほしい。
2つ目は、人材紹介会社が主催している合同面接会で、参加する場合は各ホームページに行き応募フォームから応募しよう。
基本的には事前登録が必須で当日参加はないと考えておこう。
当日に必要な書類についてはハローワーク主催の合同面接会と同じで、障害者手帳等のコピー、履歴書、職務経歴書、この3点は面接を受ける数だけ用意する必要があるので注意してほしい。
障害者枠から正社員で働ける?
このトピックでは、障害者枠を利用して契約社員やアルバイトではなく正社員で働けるのかどうか、またはどうすれば障害者枠からの就職で正社員になれるのかについて紹介したい。
結論から言うと、障害者枠から正社員で働くことはもちろん可能だ。
僕の友人で、入社時は契約社員として障害者枠を利用して入社したが、3年後に正社員として登用してもらったという人物もいる。
しかしながら、最初の入社方法を間違えると正社員として入社できない可能性もあるので十分に注意して貰いたい。
例えば、RepeL共同執筆者の黒田は障害者枠を利用して、契約社員として社会人をスタートさせた。
しかしながら、「もっと入社時に色々と相談すればよかった。正社員でも十分入社できたかもー。」と常々言っている。
(※ 上の写真は黒田がヘルプマークについて熱弁している写真だ。笑 もしよかったら彼が執筆したこちらの記事(『ヘルプマークとは?実際に利用してみた感想』)をぜひ読んで欲しい)
障害者枠から正社員として入社する方法
結論から言うと、障害者の就職に特化したエージェントに相談するのが一番良いだろう。
なぜならば、彼らは障害者の就職に関してはプロなのだ。
つまり、レジュメを確認し直接面接すれば、目の前にいる候補者がどこの企業に就職するのが最適かを知っている。
そのような障害者の就職に特化したプロに相談するのが一番良いと僕は思う。
障害者が障害者枠で就職する際の課題
さてこのトピックでは、僕個人が障害者枠で就職することの難しさについて考察したので、ぜひ紹介したい。
障害者と企業側に隔たる壁
さて、ここで1つの資料を紹介したい。
※参考:第一生命経済研究所 『雇用する側・される側の双方からみた障害者雇用の課題』
上記の資料は、企業側が障害者枠で障害者を雇用する際に生じる課題についての統計的なデータだ。
一方で下記の資料にも目を通して欲しい。
※参考:第一生命経済研究所 『雇用する側・される側の双方からみた障害者雇用の課題』
上記の資料は障害者側が企業を離職した際の離職理由だ。
この2つの資料によって、障害者が障害者枠で就職する際の課題が浮き彫りになる。
障害者枠で就職する際の課題・問題点
結論から言うと、障害者枠で就職する際に本人と会社側で十分なコミュニケーションが取れていないという課題や問題点があるのではないかと僕は思う。
先ほどの資料に目を通すと、「職場の人間関係」や「従業員の理解不足」などが問題点の上位に挙がっている。
これらの本質的な課題は、明らかに双方のコミュニケーション不足からくるものではないだろうか。
それでは、どうすればこのコミュニケーション課題が解決できるのだろうか。
先入観では無く、正しい情報を
十分なコミュニケーションが取れていない本質的な課題として、「先入観から生じる諦め」があるのではないだろうか。
つまり、課題や問題としっかり向き合うことができれば解決へ向かうが、そこに掛かる工数を先入観で見積もってしまっているのではないだろうか。
「理解して欲しいけど、難しそうだな」と思ってしまう障害者がいる一方で、「障害者にはこんなバリアフリーが必要だろう。x社と同じバリアフリーのレイアウトでいこう」と思う企業側。
一見、企業側は解決に向かおうとしているようだが、そうではない。
そこにはお互いが向き合う姿勢がまるでないのだ。
お互いがオープンなマインドで向き合える状態を作ることが、障害者枠で就職する際の課題や問題点を解決する第一歩になるのではないだろうか。
障害者枠を利用せずに一般枠で就職する際に注意すべき点
さいごに障害者枠での就職も検討していたけどやっぱり一般枠で頑張りたいというあなたのために就職する際の注意すべき点をまとめたので紹介したい。
・障害への配慮がない
・フルタイム(残業や休日出勤の可能性もある)
障害への配慮がない
一般枠で就職したからといって全く配慮してもらえないというわけではないが、基本的には配慮はないものと考えた方が良いだろう。
自身の障害特性によっては配慮がない事でストレスの原因になるので注意しよう。
フルタイム(残業や休日出勤)
一般枠で就職するとフルタイムで働くことはもちろんだが、残業や休日出勤の可能性も多いに考えられる。
通院やリハビリに通うことが難しくなるので注意しよう。
余談だが、RepeL共同執筆者の黒田は障害者枠で就職したにも関わらず、残業や休日出勤があったという。
そのためこのあたりの判断は非常に難しいが、障害者雇用枠を推しているわけでもなく、一般枠での就職を否定しているわけでもない。
あなたにとって一番良い選択を。納得のできる選択してもらいたいと願っている。
障害者枠で就職するメリットやデメリットのまとめ
いかがだっただろうか。
今回は、障害者枠で就職する際のメリットやデメリットについて紹介した。
今回の記事の要点をまとめると以下のようになる。
・障害者枠での就職とは、障害者手帳を所持している人限定の就職のことだ。一般には障害者雇用と呼ばれている
・メリット① できることを任せてもらえる
・メリット② バリアフリーが整備されている
・デメリット① 年収・給料が安い
・障害者側・企業側、双方のコミュニケーションによる課題がある
今回の記事も含めて、今後とも障害当事者として役に立つ情報を発信したい。