この記事では『障害者雇用で契約社員から正社員登用を目指すことは可能なのか。また、障害者雇用で契約社員から正社員登用を目指すために必要なことは何か』について紹介する。
RepeL共同執筆者の黒田が、障害者雇用枠で契約社員から正社員登用を目指した一人であることから、今回この記事の執筆に至った。
もちろん記事内では、障害者雇用で契約社員から正社員登用を目指した彼自身の体験談も載せている。
記事を通して、障害者雇用で契約社員から正社員登用を目指すために必要なことをわかりやすくお伝えできればと思っている。
どうか最後までお付き合い願えたら光栄だ。
もくじ
障害者雇用とは?
メイントピックを紹介する前に、少し障害者雇用について触れておきたい。
障害者雇用とは、障害者が自身の障害を苦にせず、能力や特性に応じて働くことができるようにサポートする制度のことだ。
障害者雇用は、「障害者雇用促進法」という法律によって成り立っている制度なのだ。少しそのあたりを詳しく確認していこう。
障害者雇用促進法とは
「障害者雇用促進法」とは、(中略)職業リハビリテーションの措置等を通じて、障害者の職業の安定を図ることを目的とする法律です。
参考:日本の人事部
障害者雇用促進法とは障害者の職業の安定を図ることを目的として作られた法律だ。
資本主義社会では、仕事をする上で業務効率が高いことが重要な評価対象となってしまう場合がある。
しかしながら、障害や病気を抱える人は、それが原因で社会や会社が求める生産性を担保できない可能性がある。(実際に僕自身がそうであるように…。)
そういった資本主義の合理的な考え方から守ってくれるのがこの法律だ。
障害者雇用の対象者は?
身体障害者手帳、療育手帳(自治体によって名称が異なる)、精神障害者保険福祉手帳のいずれかを所持していることが条件だ。
上記の手帳を所持していれば等級は関係なく障害者雇用を利用することができる。
障害者は契約社員からのスタートが多い
「障害者雇用って契約社員の求人ばっかりじゃない?」と思われている方が結構いるのではないだろうか。
もしそう思われる方がいるのであれば、それは正しい情報だ。
意外と知られていないことだが、実は障害者雇用を利用して入社した場合、正社員として就労できるケースは半分にも満たないのだ。
以下のグラフを確認して欲しい。(引用:1



上記のグラフからも読み取れるように、障害者雇用利用者の約半分が契約社員のような非正社員なのだ。
なぜ障害者は契約社員からのスタートが多いのか
なぜ障害者は契約社員からのスタートが多いのかということだが、結論から言うと、障害者雇用で契約社員での採用が多い理由は障害者枠での就労は、離職率が高いからだ。
障害者枠で就職した人の離職率は1年以内に30%を超えるというデータもあるように、その部分が相当な課題となっているのだ。
では、なぜ離職率が多くなってしまうのだろうか?
障害者の離職理由に関して、以下のグラフを確認して貰いたい。

※参考:第一生命経済研究所 『雇用する側・される側の双方からみた障害者雇用の課題』
上記のデータによると職場の雰囲気・人間関係や仕事内容が合わないなどの『会社側の配慮が無い』ことが障害者の離職原因としては最も高そうだ。
一方で、企業側のデータも確認してみよう。(※一部抜粋)

※参考:第一生命経済研究所 『雇用する側・される側の双方からみた障害者雇用の課題』
上記データによると、企業側としては障害者雇用に対して向き合う姿勢が伺える一方で、実行が難しいという悲鳴が聞こえてきそうだ。
つまり、『配慮してもらえていない』という障害者側の主張と『配慮しようと勤めているが難しい』という企業側の間で十分にコミュニケーションが取れていないことが離職の大きな原因のように思える。
障害者が契約社員から正社員になることは可能なのか
このトピックでは、障害者が契約社員から正社員になることは可能なのかについて紹介する。
結論から言うと、障害者が契約社員から正社員になることは十分に可能だ。
障害者が契約社員から正社員になるためには以下2つの方法がある。
1.障害者雇用の正社員採用枠を利用して転職する
2.契約社員で採用された後に信頼を積み上げ、正社員になる
障害者雇用の正社員採用枠を利用して転職する
障害者が契約社員から正社員になる方法として、障害者雇用の正社員採用枠を利用して転職するという方法がある。
以前、障害者の就職や転職をサポートしている『ラルゴ高田馬場』へインタビューを敢行した際、「障害者雇用枠で、契約社員から正社員への転職は十分に可能です」との回答を貰った。
※)『ラルゴ高田馬場』インタビュー全文はこちら

※)『ラルゴ高田馬場』へのインタビュー時の写真
契約社員から正社員登用を狙う
最初に契約社員として採用された場合にも、「x年働けば正社員になれる」といったような条件を満たせば、正社員で登用するという企業も多い。
企業の中には、テストや面接を正社員試験と称しておこなっているケースもあるだろう。
そのため、最初は契約社員として入社した後、正社員の道を目指すのもありだろう。
障害者雇用で契約社員から正社員になるために重要な3つのポイント
さてこのトピックでは、実際に障害者雇用枠を利用し、契約社員から正社員登用を目指した人物へのインタビューを元に、障害者雇用で契約社員から正社員になるために重要な3つのポイントを整理したい。

—自己紹介を少しお願いできますか?
黒田:はい。僕自身下肢障害者でして、片足が無いんですね。就労先の会社では事務職を任せて頂いておりまして、契約社員から正社員登用を目指してました。しかしながら、RepeLを手伝う中で、会社で働くよりも独立を考え始めたので、結局正社員登用はしてもらってないんですね。なので、確実なことは言えないと思うんですけど、お役に立てればと思います。
—自己紹介をありがとうございます。契約社員から正社員になることを目指していた際に意識していた点ってありました?
黒田:ありましたね。個人的には障害者雇用で契約社員から正社員になるために重要なポイントは3つあると思ってます。1つは勤怠が安定してることです。勤怠が安定していないと企業側に「この人は離職してしまうのでは?」と思われてしまいます。なので、勤怠が安定していることは重要だと思います。
次に、実績です。もちろん数字的な実績でなくても構わないと思います。しかしながら、”人が評価してくれる何か”である必要はあります。自己満足ではいけないということだと思います。
最後に、社内でのコミュニケーションです。これは障害者に限ったことではないかもしれませんが、コミュニケーションをしっかり取るというのは重要だと思います。
なぜかというと、企業側が一番恐れているのはコミュニケーション課題による離職です。そこの懸念が非常にウェイトを占めているので、「しっかりコミュニケーションを取れます」という姿勢を見せなければならないのかなと思いますね。
—ありがとうございました。契約社員から正社員になるためには、1.勤怠の安定・2.実績・3.コミュニケーションが重要なんですね。
一般雇用と障害者雇用のメリット・デメリット
もしかしたら、この段階で障害者雇用での正社員を目指すのではなく、一般雇用での正社員を目指したい。と思われている方がいるかもしれない。
そんな方のためにこのトピックでは、一般雇用と障害雇用のそれぞれのメリットとデメリットについて紹介する。
一般雇用
メリット
・給料が高い
・キャリアアップのチャンスがある
・仕事の幅が広い
デメリット
・障害への配慮がない
・フルタイム(残業や休日出勤の可能性もある)
障害者雇用
メリット
・障害への配慮がある
・一般雇用よりも就職しやすい
デメリット
・給料が安い
・キャリアアップのチャンスが少ない
・仕事の幅が少ない
一般雇用と障害者雇用の大きな違いは給料の差と障害への配慮があるかないかだ。

RepeL共同執筆者の黒田が、実際に障害者雇用枠で契約社員として働いていた時にも給料の不満はよく口にしている。
障害への配慮については、障害者であるとオープンにしていることで精神的に気が楽になる点が大きい。しかしながら、障害の特性を説明し配慮してほしいことを明確にすることが重要だと黒田は言っている。
障害者雇用での正社員採用率は身体障害者が多い
このトピックでは障害者雇用での正社員採用率が身体障害者に多い理由について触れておきたい。
先ほどのトピックで以下のグラフを確認して貰ったのは覚えているだろうか。



上記のグラフを確認して貰えばわかる通り、障害者雇用での正社員採用率は身体障害者が圧倒的だ。
なぜこのような現象、つまり障害者雇用での正社員採用率において身体障害者が圧倒的かというと障害特性を理解されやすいからに他ならない。
実際のところ身体障害者は、ハード面(バリアフリー)のケアさえすれば普通の健常者となんら変わらない仕事のパフォーマンスが出せると信じられている。
さらに、障害特性を理解されやすいだけでなく、重度の身体障害者(障害者手帳2級以上または3級で重複している障害がある人)については、1人の雇用をもって障害者を2人雇用しているとみなされるのだ。(特別障害者制度に基づいて)
そのため、身体障害者は障害者雇用での正社員採用率が高いのだ。
さいごに
いかがだっただろうか。
今回は、障害者雇用で契約社員から正社員登用を目指すことは可能なのか。また、障害者雇用で契約社員から正社員登用を目指すために必要なことは何か。について執筆させて頂いた。
下記にサクッと今回の記事をまとめるので、頭の整理をして、この記事を閉じて欲しい。
・障害者雇用で契約社員から正社員登用を目指すことは可能
・障害者雇用で契約社員から正社員登用を目指すためには以下の方法がある。
1.障害者雇用の正社員採用枠を利用して転職する
2.契約社員で採用された後に信頼を積み上げ、正社員になる
・契約社員から正社員になるために重要な3つのポイント
1.勤怠が安定している
2.実績がある
3.コミュニケーションに問題がない。
・参考リスト
参考1: 厚生労働省公式HP
