Interviewee Profile
石川里穂(仮)1997年生まれ。高校1年生の時に強迫性障害と診断される。精神障害者保健福祉手帳3級を取得。現在も服薬とカウンセリングを受けて治療中。教育機関でPCのスキルを学び、障害者雇用枠を利用して就労中。
もくじ
精神障害と発達障害を同じ区分にするのはなぜ?

ーこんにちは。本日はどうぞよろしくお願いします。
石川:はい、よろしくお願いします。
ーでは早速ですが、このRepeLでは反発の声・怒りの声をコンセプトにしています。精神障害者になって感じる社会に対する怒りはありますか?
石川:精神障害って症状が本当にバラバラで、実は発達障害も精神障害に区分されるんですけど、精神障害って言われると違和感がありますね。
さらに、発達障害の中にもゆっくり成長できる方がいたり、成長自体が難しい方がいたり、本当に多種多様なので、鬱だったり私みたいに強迫性障害の人と一緒くたにされた時に、精神障害の中にも色々な種類があるのになって思います。
発達障害は持って生まれてくるものが大きいと思うので。
一方で、鬱や強迫性障害は生まれた時は何もなかったけど学校に入って色々あってとか、仕事が忙しくてとか育ってくる段階で発症します。
なので、そこの区分はなんでだろうなって思うんですけど、まあ多分お医者さんとか偉い人が決めたんだと思います。笑
ーこの区分にはちょっと無理があるように感じますね。
石川:不思議ですよね、アプローチが違うのになんで同じ区分なんだろうみたいな。
例えばですけど、身体障害でも耳の聞こえない方と手に麻痺がある方で、就職に対してのアプローチって変わってくると思うんですよ。
耳の聞こえない方は筆談や手話でコミュニケーションが取れたら手先を使う器用なお仕事もできると思います。
一方で、手先に麻痺がある方は細かい仕事はできないかもしれないですけど、コミュニケーション自体はしっかり取れますよねきっと。
なので、アプローチが全然違うのに一緒くたにされるとちょっと違うなって思いませんか?
ー本当にそう思います。
石川:精神障害者は全員一緒みたいな括りにされると、個々で持ってる障害は全く違うので、それは身体障害でも同じだと思うんですけど、やっぱり一人一人を見ていかなきゃいけないんだろうなっていうのはすごい思いますね。
これは怒りというか、そうしなきゃいけないんだろうなっていう私の思いです。
おかしな固定観念を持つのはやめてください

ー身体障害でも足の悪い人はこう、耳の悪い人はこうみたいな固定観念はありますね。
石川:ですよね。精神障害の場合、その固定観念がよりあると思います。
精神障害の人は危ないみたいな、それこそニュースで犯人は精神疾患がありましたってよく聞きませんか?
そういう報道のされ方をすると、メンタルに障害を抱えている人の肩身がどんどん狭くなっているのを感じます。
なので、精神障害者の怒りっていうとやっぱり固定観念ですよね、報道の仕方に対してもどうなのかなって思う時もあります。
ー言葉が一人歩きして精神障害者に対するイメージが悪くなりますね。
石川:そうなんですよ。精神障害者は異常、頭がおかしいみたいな固定観念を植え付けられると、ちょっと心の調子が悪いなって人が病院に行かなくなっちゃうんですよね。
病院に行ってるって知られたらどうしようみたいな、それってやっぱり固定観念の弊害なんじゃないかなって思う部分もありますね。
ちょっと具合が悪い時に、風邪薬を貰いに行くような感覚で病院に行って、すぐに治ったらそれで良いのになってすごい思うんですよ。
なのに、精神科に行く人=精神がとても異常な人みたいなイメージがあるので、会社を辞めたりすぐに治らない領域になってから受診する人が多いんですよね。
本当は、ちょっと心の調子が悪いから病院に行こうかなって感じで行けるイメージがあれば、会社を辞めるほどになる前に防げる人もたくさんいると思うんですけど。
ただやっぱり、ネットやニュースのイメージだと精神障害を持ってる人はやばい人みたいなのはありますよね…。
ーこれは本当に解決しないといけない問題ですね。
石川:あと、ネットとかSNSでもそうですけど、“メンヘラ”って言葉をよく見かけないですか?
メンヘラって言葉は精神疾患を持ってる人みたいな意味で、メンタルヘルスが略されてメンヘルになって、それが訛ってメンヘラになったらしいんですけど、今はどっちかっていうと彼氏と一緒にいないと寂しい女の子とか、構って欲しくてリストカットしちゃう女の子みたいなイメージついて、これも言葉が一人歩きしてるなっていうのは思いますね。
『私ってメンヘラだから〜』みたいなことをふざけて言ってる子を見かけると、ちょっと腑に落ちない時があります。
ー障害に向き合って努力されてる方もいるのに固定観念を植え付けるようなネットの記事だったりテレビの報道は良くないですよね。
石川:精神障害を抱えながらちゃんと働いている方もたくさんいて、私の職場でも、鬱だったり統合失調症を持っている方がいますけど、体調が悪い時はお休みすることもありますが毎日出社して、ちゃんとお仕事してます。
ー社会人として認められたい気持ちが強いですか?
石川:私としてはやっぱり社会の一員として就職して仕事をしたいなっていうのは思ってて、なんていうんですかね、学校に行ってるわけでもなくて仕事もしてない時期が2年くらいあったんです。
その時期ってやっぱり、これからどうなっていくんだろうっていう不安がずっとあって、教育機関の存在も知らなかった時は、精神障害を持ってる人が仕事なんてできるのかなってずっと思ってました。
たまたま教育機関を見つけて入校したら、私と同じような人がたくさんいて、あ〜こういうところあるんだみたいな。
ただやっぱり、情報の少なさも問題かもしれないですよね。
どうしたらいいかわからない人も多いと思います。
障害者を支援する制度はあるけど周知されていない

ー教育機関はどのようにして見つけたんですか?
石川:親がネットで探し物をしてた時に募集を見つけたらしくて、病院のカウンセラーさんにこういうのもあるらしいんですよねって見せたら、行ってみたらって勧められて行きました。
教育機関では、就職するためのスキルを身に付けるのはもちろん、自分への理解や薬への理解も授業の一環としてありました。
ちなみに病院では、手帳があれば障害者雇用で無理なく働けるよくらいの漠然とした情報しか得られなかったですね。
ーそこの教育機関で今の職場を見つけたんですか?
石川:そうです。しかしながら私のクラスは入校から修了までの期間が6ヶ月だったので、半年で勉強して就活するのは難しいって言ってる人もいました。
なので、就職を目指してたけど作業所に通うことにした人もいます。
作業所にも色々種類があって、就職の一歩手前みたいなところなんですけど、行かれたことあります?
ー精神障害の方が働いているカフェに行ったことあります。
石川:そうなんですね!作業所ってのはカフェでパンを焼いて売ってみたり、小物を作って売ってみたり、あとは事務関係の事業所とかもあって郵便物の仕分けをしてみたり。
いわゆる軽作業をやって、いきなり就職するとそこから毎日働かなければ行けないっていうプレッシャーもあるので、週三日くらいから始めてみましょうみたいな感じで慣らしていくことができるんです。
しかしながら、お給料の額は本当に少ないんです。
なので、事業所は収入よりもリハビリの意味合いが強いと思います。
こういった制度自体は探せばたくさんあるんですよね、ただ周知がされてなさすぎるって感じがしますね。
ーこのRepeLでも作業所(就労継続支援)について執筆しているんですが、まだまだ周知されてない気がします。
石川:作業所ってA型とB型があるんですよね。
片方はここで経験を積んで社会に出て行きましょうみたいな、もう一つは重い障害を持ってたりする方が社会には出て行けないからここで少しずつ仕事しながら生活をして行こうみたいなところで、また目的も違うんですよね。
※作業所について詳しく知りたい方はインタビューの最後にリンクを貼っておりますので、そちらの記事もぜひ読んでください。
手帳の更新にも問題があります

ー話は戻りますが、障害者雇用で就職したということは障害者手帳をお持ちですよね?
石川:はい、持ってます。
精神障害者保健福祉手帳って2年更新なんですよ。
精神障害って、健常者として生活できるレベルまで治る人もいるので更新があるんです。
ただ、それが問題で障害者手帳がないと障害者雇用ってできないんじゃないですか。
もし、私が病気が治ったと判断されて、障害者手帳の更新が認められなくなると、私は障害者ではなくなるので今の会社を退職しないと行けないんですよ。
そこは精神障害者で障害者雇用で働いてる人の一番怖いところかもしれないです。
ー身体障害者との大きな違いの一つかもしれないですね。
石川:障害者雇用でゆとりがある状態で働けてるからこそ症状が良くなっているので、そこで働けてるからもう大丈夫だよねって手帳を剥奪されて、一般枠で入ったら残業がある、休日出勤がある、忙しくてまた症状が悪くなるみたいな。
ネットで調べるとそうやって症状が悪くなって結局障害者に戻った人のコラムもありました。
でも、良くなった人がずっと障害者手帳を持ってるのもおかしな話ではあるので、更新があるのは仕方がないって思うんですが、ちょっと怖い部分ではあるなと思います。
私がもし、普通に生活できるよね大丈夫だよねって手帳を持って行かれて一般枠で働けるかって言われたらやっぱり働けないと思うので・・・。
ー障害者雇用と比べると配慮もありませんからね…
石川:こういう配慮は必要ですが働けますって行くと、だいたい精神障害を持ってる人はダメなところが多いっていうのは聞きました。
そうなると、精神障害を持ってることを隠して就職する人がいるんです。
これをクローズって言うんですけど、障害を隠して就職するか、障害をオープンにして就職するかなんですが、精神は隠しやすい障害ではあるので会社に言わずに就職して具合が悪い時も頑張って行く人が結構多いです。
一方で、障害をオープンにすると一般枠では難しくて障害者雇用になりやすいかなって思います。
ー障害をオープンにして理解を得られている方が双方安心ですよね。
石川:それはそうですね、気が楽ですよね。手帳があるうちは障害者雇用で働こうかなと思ってます。
ただやっぱり、精神障害者ってことをバレたくない人もいるみたいで、というよりバレたくない人の方が多いんですかね。
私はカウンセリングでも色々お話をしてたので、自分はこういうものですって出しちゃうことになんの躊躇いもないんですけど、私の周りでは精神障害を持ってるって思われたくない人もいます。
あと精神障害者っていうのを認めたくないがゆえに障害者手帳を取得しない人もいます。
ーなるほど、石川さんは手帳を持ってることで得られるメリットは大きいですか?
石川:そうですね。繰り返しになりますが、障害者雇用が使えるのは大きなメリットですね。
手帳を持ってないと一般枠にしか入れないですけど、手帳を持っていれば障害者雇用枠と一般枠の両方から選ぶことができるっていうのはやっぱり就職を考えてる人には1番のメリットだと思います。
あとRepeLの記事を拝見したんですけど、身体障害者手帳で割引がどこまでできるかみたいなのやってましたよね。
精神障害者保健福祉手帳でも遊園地や映画館は割引されるんですけど、電車とかバスは割引されないんですよ。(条件によっては割引されるみたいです)
そこに関してもなんで精神障害はダメなんだろうなって思う部分はありますね。
ー精神も身体も目に見えるか見えないかの違いだけですよね。
石川:そうですね、割引の話とは少し外れますが、具合が悪いけど電車に乗らなきゃいけない状況の精神障害者が、果たして優先席を譲って貰えるのかっていうのは考えたりしますね。
こっちから精神障害で具合が悪いんですって言うわけにもいかないですし、でも気づいてもらうのは100%無理だと思うので、そういう面でも周りからのサポートは受けづらいのかなって思います。
強迫性障害は障害者であることに自覚を持ってます

ー誰かと接する時って、しっかりしようと思って余計に理解を得られにくいかもしれないですよね。
石川:それは結構あって、家の中では症状が酷いのに外ではしっかりしてる人は多いです。
それこそ、強迫性障害は自分が障害者であることに自覚を持ってるというのが特徴なんですよ。
まず、私の症状の説明をすると学校に関するものがダメだったんですね。
ー学校に関するもの?
石川:こういう言い方をすると、えっなにそれ?ってなりがちなんですけど、強迫性障害の中に不潔恐怖っていう症状があって平たく言えば潔癖症なんですけど。
普通の人は、泥の付いたものとかホコリが付いたものとか、見てわかるようなものを汚いって思うんですけど、不潔恐怖を持っている人は、自分の中でこれっていう何か汚い基準があってそれに対するもの全てが汚いってなるんです。
私は、学校が汚いってイメージだったので、それがなんで汚いのか説明してって言われても漠然としたイメージなのでわからないんですけど。
学校が汚いっていうイメージを持ったがゆえに、学校で使った教科書は汚いから家に持って帰れない、学校で使ったカバンは汚いから家の床に置けない、制服も家の中に持って帰れないとか。
最初は教科書が家で広げられないから宿題は学校で終わらせるとかそういう話だったのが、どんどんエスカレートしてきて最終的に学校から帰ってきたら家の廊下で制服を脱いで、そのままお風呂場に直行して全身洗い流してからじゃないと部屋にあがれない状態が続いて、そのあたりが一番酷かった時期だと思います。
ーなるほど、潔癖症とは似て非なるものって感じですね。
石川:強迫性障害は自覚があるっていう話に戻りますが、私は学校が汚いものと思っていたので、学校に持って行ったスマホを家に帰ったらアルコールウェットティッシュを1パック使って2時間くらいずっと拭いてたんですよ。
そういうのをやってる時に、自分って普通の人と違うなぁどこかおかしいんだろうなって思うわけですよ。
だからこそそれを人前で隠そうとするんです。
友達と居たら手が洗いたい場面でも我慢して、友達と別れた後に手を洗いに行こうとかそういうことがあるので、家族だったり友達に気が付かれにくくて治療が遅れやすいっていうのもあるみたいです。
ー手を洗わないと怖いんですか?気持ち悪いみたいな?
石川:私が一番酷かった時期は、学校のものを触った後に手が洗えない状態だと、もうどこにも触れない、お腹が空いていてもご飯は食べられない、家の中にも入れない時がありました。
学校から帰ったらすぐにお風呂場に直行してシャワー浴びてから家の中に入る生活だったんですけど、帰ったタイミングで家族がお風呂に入ってることもあるわけですよ。
そういう時は、家の中に入れないのでどんなに寒い真冬でも玄関で座って待ったり、外で待ったり、少しくらい家の中で待っていればいいじゃんって思うかもしれないんですけど、寒いことよりも家に入ることの方が嫌になっちゃってる状態ですね。
まあ、恐怖もあるんですけどそういう嫌悪感もあります。
見守る時間も作ってほしい

ー最後に精神的なバリアフリーについて、周りの人のどういうサポートがあったら助かりますか?
石川:何もしないで欲しいっていうのはあるかもしれないですね。
一番症状が悪い時期に、元気出してとか一緒に遊びに行こうよとか、外に出たら元気になるからって声をかけてくれる人が結構いたんですけど、症状が悪い時期って外出するだけでものすごい労力を使うんですよ。
なので、本当に家で静かにして居たいのに連絡が多いとストレスになります。
ある程度元気になってきた状態だと、外に遊びに行って気が晴れることもあるんですけど、本当に酷い状態だと、外に出て疲れて結局良いことなかったじゃんって帰ってくるみたいなことになり兼ねないので。
もちろん、声をかけてあげることが必要な時もあるんですけど、周りに精神障害を持っている人がいる方は、見守る時間も作って欲しいって思いますね。
それは、自分の中で色々考えてどうにかしようとしてる時があるので、そういう時に横槍を入れられると、邪魔されたみたいに考えちゃうことがあるんです。
毎回断るのも申し訳ないと思ってますし、気にかけてくれるのは本当にありがたいと思ってます。
ー見守る時間ですか。すごくわかります、僕自身も自分の中で考えてる時期があったので。
石川:それこそやっぱり、友達よりも近い存在の家族は見守ってあげたほうが良いのかなと思います。
鬱と適応障害を同時に発症した子がいるんですけど、久しぶりにあった時に、親が障害を受け入れてくれなくて薬も取り上げられたし病院にも行かせてもらえなくて、お前は正常だお前は正常だってずっと言われてきて辛かったっていう話を聞きました。
やっぱり、家族が受け入れてくれない人が結構いるんですよね。
そういう面では、私は家族に受け入れてもらえて、適切な治療を受けさせてもらえた上に治療に関するお金も出してもらえたので、すごい助かったなと思ってます。
今は自分で働いたお金でカウンセリングに行ってますけど、当時は親がお金を出してくれなかったらカウンセリングに行くお金もなかったですし、仕事にも就けなかったと思います。
なので、近い人のサポートって本当に大事だと思うんですよね。
それはどんな障害でも一緒だと思うんですけど、だから理解を持ってもらうことはありがたいですし、そっとしといてもらえる時はそっとしといて欲しいですし、あとは適切な治療を受けることですね。
ただ、障害を持ってる人も症状が良くなって気持ちにゆとりが出てきたら、自分のことを相手に理解してもらえるように努力は必要ですよね。
全部わかってくださいみたいな投げやりな感じじゃなくて、こういうことがあってこういうのが嫌なんです、だからこういう時はこうして欲しいんですって言わないと相手もわからないと思うので。
そこで何も言わないのに相手が理解してくれないっていうのはちょっと違うじゃないですか。
なので、症状が良くなったらちゃんと自分から言っていくことも必要になってくると思います。
ーコミュニケーションは障害に関わらずどんな時でも必要ですよね。本日はとても貴重なお話を聞かせていただいて本当にありがとうございました!
石川:こちらこそ、ありがとうございました!
就労継続支援について詳しく知りたい方は下記のリンクよりお願い致します。
