Interviewee Profile
五箇賢司。1968年生まれ、関東在住。42歳の時、脳膜腫を計3度の手術により摘出。後遺症による左半身麻痺になり身体障害者手帳2級を取得。元理学療法士、現在は就労継続支援B型の事業所を利用している。
エスカレーターは歩くものではない
ーこんにちは。本日はどうぞよろしくお願いします。
五箇:はい、よろしくお願いします。

ーこのRepeLでは、怒りをコンセプトにしているのですが、障害者になって感じる怒りはありますか?
五箇:はい。 まず自分に対してなんですけど、なんで自分がこんな障害を負ってしまったんだ…と思いますね。
障害を負って9年になるんですけど、今でも自問自答しています。
ーそれは後遺症が残っているからですか?
五箇:そうですね。 私は左半身麻痺なんですけどね、エスカレーターに乗る時、関東は左寄り、関西は右寄り、というルールは間違ってると思うんです。
これは実際にあった話なんですが、エスカレーターで左に寄れないので真ん中に立っていた時、後ろから高校生がやってきたんです。
その高校生に「すみません、寄ってください」と言われたので右側に寄ったんです。
そしたら「そっちじゃないですよ」と言われたんです。
高校生が悪いわけじゃないけど、右にしか寄れないんだからしょうがないだろ、と怒りを感じました。
ーその怒りは高校生にぶつけたんですか?
五箇:いいえ、高校生が悪いわけじゃないので自分の中に溜め込んでます。 なに言ってんだよとは思いましたけどね。笑
ー僕だったら直接怒りをぶつけてたかも知れないです。どうしたらこの問題は解決すると思いますか?
五箇:エスカレーターは本来、歩くものではないと思っています。
なので、エスカレーターでは歩かない、と徹底してほしいですね。
それと、横幅が狭い一人用のエスカレーターが時々あると思いますけど、あれは助かりますね、右も左もないので。笑
俺の杖どこいった?

ー他にも怒りを感じる瞬間はありますか?
五箇:杖の話になるんですけど、実は2回盗まれてます。
1回目は近所のスーパーで、入り口の傘立てに杖を置いてショッピングカートを杖の代わりにして買い物をしてたんです。
そして、買い物が終わって帰ろうとしたら杖がないんですよ。
傘を盗む感覚で盗まれたと思うと怒りが込み上げてきます。
ーその後、帰りはどうしたんですか?
五箇:杖がなくてもなんとか帰れる距離だったので助かりました。
ーお店の人には相談したんですか?
五箇:お店の人には言ったんですが対処のしようがなかったんでしょうね、、一応文句は言って帰りました。笑
2回目は、電車のホームの待合室で、杖を立て掛けられる場所がないので自分から少し離れた所に立て掛けてるんですけど、朝の忙しい時間なので誰も盗む人なんていなかったんです。
ですが、ある日の昼間にいつも通りに立て掛けてたら気が付いた時には無くなっていたんですよ。
駅員に聞いたが、落し物でも届けられていなかったので完全に盗まれました。
私の杖はそんなに高価なものでもないので、なんで盗むんだよって感じですね…。
ーもしかしてその時も杖なしで帰ったんですか?
五箇:そうですね、駅に予備の杖は用意されていないので杖なしで帰りました。
今は盗まれない対策として、杖に電話番号を書いています。笑
ー僕も杖ユーザーなのでこの話はすごく共感します。 わざと杖を盗ませて犯人捕まえてなんで盗ったのか問い詰めたいですね。笑
便利なものにはお金を惜しまない

五箇:すみません、もう一つ怒りがあるんですけど良いですか?
ーもちろんです!お聞かせください。笑
五箇:建物や飲食店に入る時なんですけど、段差があるじゃないですか?
私は、段差があるという理由だけでお店に入らない事もあります。
実は、行ってみたいラーメン屋さんがあるんですけど、結構段差があるからなぁ、あれは行けないなぁ、やめておこうって事が何度もあります。
ー今日もここへ来る間に段差がありましたね。僕のリサーチ不足で申し訳ございません。
五箇:いえいえ、今日は手を貸してくれる方がいたので大丈夫だったんですけど、やっぱりスロープ、最低限手すりはほしいですね。
入りたいお店に入れないのは門前払いをされているようで辛いです。
私は一段でも高さによっては躊躇してしまうので…。
ーバリアフリーがもっと普及していけば良いですよね。
五箇:その通りですね。
私思うんです、障害者は値段が高くても入りやすいお店に入る。
実は、私の杖には”杖スタンド”というものを取り付けてるんですが、もちろんお金がかかります。
しかしながら、私たちは便利なものにはお金を使うんです。
なので、スロープや手すりを設置してくれたら需要はあるのでお店側も元は取れると思うんですよね。
ーそうですね。僕も入りやすいお店を探して入りますし、松葉杖や義足といった補装具にはお金を惜しまずに使ってます!
観光地にもバリアフリーが充実していたら…

ーご自宅はバリアフリーに改装されてるんですか?
五箇:たまたま段差がない造りでしたので改装はしてないです。
ですが、家を買う時にユニットバスに手すりがつけられますよと勧められたんです。
当時、健常者だったので手すりなんて要らないよと思ってたんです。
しかし、知人に誰が来るかわからないし、ユニットバスは後から手すりを取り付けるのは大変だよと言われて、それもそうだなぁと思い、手すりをつけたんです。
それが今では自分が助かってます。笑
ー付けておいてよかったですね。笑
五箇:お風呂関連でもう一つ思い出したんですけど良いですか?
昔、旅行が趣味でよく行ってたんですけどね、最近はなかなか行けないんです。
旅行先のお風呂なんですけど、私は立って着替えられないので、脱衣所に椅子がほしいですね、あと手すりもあると助かります。
ー僕も椅子がないと着替えられないのですごくわかります。そういった細かい気遣いがあると嬉しいですよね。
五箇:そうですね。
私はお風呂の広さは求めてないので使いやすさ重視です。
お風呂にプールサイドの手すりみたいなものが設置されてると助かります。
大都市にはそういったバリアフリーが充実したホテルが結構あるけれど、観光地にはまだまだ少ないので増えてほしいと思いますね。
障害を理解するのは教科書通りには行かない
ー最後に、サポートする側、される側どちらの立場もわかる今、思う事はありますか?
五箇:私が理学療法士だった頃は、患者さんの立場になって考えるってよく言ってましたけど、わかっていなかったと思います。
まず、麻痺っていうのがどういうものなのか全然わかっていなかった。
例えば今の私の場合、手のひらに水が落ちたら普通の人は水が落ちた、冷たいと気がつくと思うんですけど、私は気がつきません。
熱いものを触っても脊髄反射がないんですよ、触ったら触りっぱなし、下手したら火傷しますよ。
当時はそんな事も理解できていませんでした。
障害者になって気が付いたのは、目線って大事だなと思いました。
手術をした直後は車椅子に乗っていたんですけど、とあるリハビリ施設の方は目線を下げてくれず、上から喋ってくるのですごく嫌な気持ちになりました。
ー健常者が障害者の気持ちを理解するのは難しいって事ですね。
五箇:障害は一人一人違って、教科書通りには行かないので難しいですね。
ー本日はとても貴重なお話を聞かせていただいて本当にありがとうございました!
五箇:こちらこそ、ありがとうございました!普段なかなか言いたくても言えない事が吐き出せたのでスッキリしました!
