気になる世界の障害者雇用の現状ーフランス編ー

下肢不自由障害。片足不全。義足をつけて生活をする。身体障害者手帳2級を所持。


この記事では『フランスの障害者雇用』について紹介する。

日本の障害者雇用枠を利用して働いた経験がある僕自身が、世界の障害者雇用について興味を持ったので徹底的に調べてみた。

障害の定義や法定雇用率制度を採用している点など、全体的にフランスと日本の障害者雇用制度は似ていることがわかった。

 

今回の記事を簡単にまとめると

・日本とフランスの障害の定義は似ている

・障害者差別禁止法と割当雇用制度の2つのアプローチを採用

・フランスの法定雇用率は6%

 

それでは、日本と比較をしながら出来るだけわかりやすく紹介していく。

この記事を読んでわかること

 

フランスの障害の定義

まずはじめに、日本の障害の定義と比較しながらフランスの障害の定義について紹介したい。

障害の定義を比較しながら学ぶ事によって、他国と日本の障害者の権利について知る良いきっかけになるだろう。

 

障害の定義(フランス)

障害とは『身体、感覚、知能、認知または精神の機能のうち、ひとつまたは複数の機能の実質的、継続的または決定的な低下のほか、重複障害または日常生活に支障をきたす健康障害のために自らの環境において被るあらゆる活動の制限または社会生活への参加の制約の全て』である。

フランスの定義を僕なりに解釈すると、障害とは身体の機能(身体的、感覚、知能的、精神的)が低く、日常生活や社会生活に支障をきたし制限がある人といった感じだろう。

 

障害の定義(日本)

『身体障害、 知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の 障害がある者であって、障害及び社会的障壁(事物、制度、慣行、 観念等)により継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう

 

日本の定義も僕なりに解釈すると、障害とは身体的、知能的、精神的な機能の低下によって、日常生活や社会生活に支障がある人といった感じだろう。

フランスと日本の比較すると、障害の定義は似ているが、雇用政策の対象となる障害者の範囲はフランスの方が広い。

では、なぜ国際的に定義を統一しないのか、その理由は障害を定義することによって起こる谷間の障害の問題があるからだ

つまり、障害の定義から外れてしまった人は支援やサービスを受けられなくなってしまう可能性があるため、各国で定義が異なるのだろう。

※谷間の障害とは:障害の定義や制度によって障害認定されない障害や難病のこと。

フランスの障害者を守る法律と義務

このトピックではフランスの障害者を守る法律と義務について紹介する。

他国の法律や義務を知ることによって、その国の障害者に対する考え方や施策が見えてくるだろう。

 

フランス差別禁止法

・民族または人種によって、社会的保護、健康、福利厚生、 教育、サービスの利用またはその支給において差別があってはならない。

・民族または人種、宗教、信条、年齢、ハンディキャップ、性的指向または性別によって、 労働組合への加入、採用、雇用、職業訓練、労働条件や昇進において差別があってはならない。

・妊娠しているまたは母親であることによって、いかなる差別もあってはならない。

・性別によって、財・サービスの利用またはその支給において差別があってはならない。

 

障害のある人々の権利と機会の平等、参加および市民権のための法律(2005年法)

2005年法は、障害者施策全般を大改正したもので、新たに『合理的配慮』という概念が導入された。

合理的配慮とは、障害者の人権が健常者と同じように保障されるとともに、教育や就業、その他社会生活において平等に参加できるよう、それぞれの障害特性に合わせた配慮のことだ。

なお、フランスでは『合理的配慮』ではなく『適切な措置』という言葉が使用されている。

 

一方で、日本では2016年に障害者差別解消法が制定されて、障害者それぞれに合ったやり方で配慮すること、差別をなくすことで、障害者も健常者も共に生きる社会を創ることを目指しているのだ。

障害者差別解消法について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事も読んでほしい『障害者差別解消法とは?障害者本人が解説

フランスの障害者雇用政策

このトピックではフランスの障害者雇用政策について紹介する。

世界における障害者雇用政策は、大きく『障害者差別禁止法』と『割当雇用制度』の2つのアプローチに分かれる。

フランスでは、1990年に差別禁止原則を法制化し、2005年に割当雇用制度を企業に義務化したのだ。

つまり、2つのアプローチを採用していることになる。

 

障害者差別禁止法

アメリカのADA(障害に基づく差別を全般的に禁止と定める法律(Americans with Disabilities Act))がモデルになっている。

ADAの特徴は、機会均等と待遇の平等、差別禁止、合理的配慮と合理的調整が挙げられる。

具体的には、募集、採用、昇進、解雇、報酬、訓練などの雇用条件で、仕事ができる障害者を障害をゆえに差別することを禁止している。

 

割当(わりあて)雇用制度

法律で雇用率を定めて事業主に義務的な雇用を課す割当雇用制度は、国によって雇用率・納付金制度は様々だが、共通で見られる原則は『障害者雇用は社会の責任・義務である、基金の分配は事業主の連帯責任に基づく、目的は障害者の職業的統合を促進すること』である。

 

日本は割当雇用制度を採用していたが、2016年に障害者差別解消法(障害者差別禁止法)が制定されたことによって、割当雇用制度と障害者差別解消法の2つのアプローチとなった。

世界的にも、この2つからアプローチを試みる国が増えてきているのだ。

 

割当雇用制度(法定雇用率)について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事も読んでほしい『障害者を雇用する義務、法定雇用率とは?

フランスの障害者雇用に対するアプローチ

このトピックでは、フランスの障害者雇用に対するアプローチについて紹介する。

先ほどのトピックでも述べた通り、フランスでは障害者差別禁止法と割当雇用制度を採用しているが、このトピックでは割当雇用制度について紹介したい。

先ほどのトピックでも述べた通り、フランスでは障害者差別禁止法と割当雇用率制度の2つのアプローチを採用している。

日本でも採用している割当雇用制度だが、フランスと日本では少し変わってくる。

日本の割当雇用制度は、雇用されにくい障害者を対象にした積極的優遇策と考えられ、1976年法改正からはダブルカウント方式によりカウントが2倍になることで重度障害者の雇用を促進させる意図があった。

フランスでも取り入れられていたが、差別禁止規定を組み込むことで2005年法改正によりフランスはダブルカウント方式を廃止したのだ。

ダブルカウント方式は企業にとって雇用率を達成しやすい有利な側面があるが、カウントされる障害者からしてみれば、労働の質や労働条件の面から有利なことは考えにくく、むしろ2人分としてカウントされる分だけ強い疑問を持つ重度障害者もいる。

実際に僕自身もダブルカウントで雇用されていたが、企業に利用されているだけではないかと疑問を抱いていた。

フランスの障害者雇用の現状

このトピックでは、フランスの障害者雇用の現状について紹介する。

まずは、下記の表に目を通してみてほしい。

日本の法定雇用率2.2%に対してフランスの法定雇用率は6%になる。

しかしながら、雇用義務を果たす方法は雇用の他にも、障害者が数多く就労している保護労働セクターへの仕事の発注、障害者を研修での受入れ、納付金の支払いがあるのだ。

納付金の支払いについては日本にも存在するが、フランスでは従業員規模数によって金額が異なる。

従業員数が20名から200名以下の企業の場合、不足する障害者1名につき年額で最低賃金(1時間あたり)の400倍、200名から750名以下の企業の場合は500倍、750名以上の企業の場合は600倍を納付しなければならないのだ。

フランスの最低賃金を調べてみると約10ユーロ(約1,170円)なので、400倍で468,000円、500倍で585,000円、600倍で702,000円になる。

一方で、日本の納付金は従業員100名以上の企業の場合、不足する障害者1名につき年額600,000円(月額50,000円)を納付しなければならない。

このような制度があるので、実雇用率は2014年の数字で3.3%になっているのが現状だ。

しかしながら、日本は実雇用率2.05%なのでフランスの実雇用率が高いことには変わりない。

フランスの障害者雇用まとめ

いかがだっただろうか。

今回はフランスの障害者雇用について紹介した。

日本とフランスでは、障害の定義や法定雇用率制度を採用していることなど似ている点は多かったが、掘り下げてみると様々な違いがあることがわかった。

実は障害者雇用に対するアプローチの歴史を振り返ると、日本はフランスと同じような流れを辿っているのだ。

今後もフランスの障害者雇用政策には注目していきたい。

これからも、日本だけでなく各国の障害者雇用について執筆していくので、ぜひブックマークもしくはスマホのホーム画面に追加して定期的に確認してほしい。

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