日本では、障害のある人が適切な支援を受けられるように 障害者区分 という制度が設けられています。この制度により、障害の程度に応じた福祉サービスが提供されます。本記事では、障害者区分の定義や認定基準、申請方法などについて詳しく解説します。
障害者区分 とは?その目的と意義
障害者区分とは、障害者総合支援法に基づき、障害の程度を客観的に判定し、必要な支援のレベルを決める仕組みです。主な目的は、以下の2点です。
- 適切な福祉サービスの提供:障害の程度に応じた支援を行い、自立した生活を支援する。
- 公平な支援の実現:客観的な基準を設けることで、支援の不公平を防ぐ。
この制度により、必要な人に必要な支援が行き渡るようになっています。
障害者区分 の認定基準とは?
障害者区分の判定は、主に**「障害支援区分認定調査」を基に行われます。これは、自治体の担当者が申請者の日常生活の困難さを評価**し、客観的な基準で区分を決定するものです。
主な判定基準に基づく障害の分類
障害者区分(障害支援区分)の認定では、障害の程度を客観的に評価するために、**「身体的な障害」「知的障害」「精神障害」「医療的ケアの必要性」**の4つの視点から判定が行われます。それぞれの基準に該当する主な障害を以下にまとめました。
1. 身体的な障害の程度(肢体や感覚機能の障害)
主に運動機能や感覚機能に影響を及ぼす障害が該当します。
- 肢体不自由(まひ、四肢欠損、関節の可動制限など)
- 視覚障害(失明、視力低下、視野狭窄など)
- 聴覚障害(難聴、全聾、言葉の理解や発音の困難)
- 言語障害(発声困難、構音障害、吃音など)
- 内部障害(心臓病、腎不全(透析治療)、呼吸器疾患など)
- 重度の運動障害(脳性まひ、進行性筋ジストロフィーなど)
2. 知的障害のレベル(発達・認知機能の障害)
知的発達の遅れにより、学習能力や適応行動に支障が生じる障害が含まれます。
- 軽度知的障害(軽い発達の遅れがあり、部分的な支援が必要)
- 中度知的障害(学習や日常生活に支援が必要、社会適応が困難)
- 重度知的障害(日常生活の大部分で介助が必要)
- 最重度知的障害(ほぼ全ての生活動作において介助が必要)
3. 精神障害の影響(精神的・行動面の障害)
主に精神的な安定や社会適応に影響を及ぼす障害が該当します。
- 統合失調症(幻覚や妄想、社会生活の困難)
- うつ病・躁うつ病(双極性障害)(気分の大きな変動、意欲低下)
- 発達障害(自閉症スペクトラム(ASD)、ADHD、学習障害(LD)など)
- パーソナリティ障害(対人関係や自己制御の困難)
- 摂食障害(重度の拒食症や過食症で健康に影響)
- PTSD・不安障害(強い不安や恐怖が日常生活に支障を及ぼす)
4. 医療的ケアの必要性(継続的な医療支援が必要な状態)
特定の医療処置や看護が日常的に必要な障害が含まれます。
- 人工呼吸器の使用(重度の呼吸障害による常時管理)
- 胃ろう・経管栄養(口からの摂食が困難な場合)
- 透析治療(腎不全による血液透析・腹膜透析の継続)
- 重度てんかん(頻繁な発作があり、医療的管理が必要)
- 進行性の神経難病(ALS、パーキンソン病、筋ジストロフィーなど)
障害者区分 の申請方法と流れ
障害者区分を取得するには、自治体に申請を行い、調査・審査を受ける必要があります。以下が主な流れです。
- 申請
市区町村の窓口で申請書を提出。必要な書類(診断書など)も併せて提出します。
- 認定調査
調査員が訪問し、日常生活の状況をヒアリングします。
- 審査会での判定
調査結果を基に、専門家が審査を行い、障害支援区分を決定します。
- 認定結果の通知
自治体から結果が通知され、認定された区分に応じたサービスを利用できます。
障害者区分 によって受けられる福祉サービス
障害者区分に応じて、さまざまな福祉サービスが提供されます。以下に代表的な支援内容を紹介します。
- 介護サービス
- 訪問介護(ホームヘルパーによる生活支援)
- 施設入所支援(障害者施設での生活支援)
- 短期入所(ショートステイ)
- 就労支援
- 就労移行支援(一般就労を目指すトレーニング)
- 就労継続支援A型・B型(障害者向けの雇用支援)
- 医療的支援
- 訪問看護(自宅での医療ケア)
- 障害者医療費助成制度(医療費の補助)
支援の内容は、障害者区分の等級によって異なります。例えば、区分が高いほど利用できるサービスの範囲が広がる傾向にあります。
障害者区分 の更新と変更について
障害の状態は変化することがあるため、定期的に区分の見直しが行われます。また、以下のような場合には、区分の変更申請が可能です。
- 障害の状態が悪化した(支援の必要度が増した)
- 自立が進み、支援の必要性が減った
変更を希望する場合は、自治体に相談し、再審査を受けることができます。
まとめ
障害者区分の認定では、障害の種類や程度を総合的に評価し、適切な支援の提供が行われます。各区分によって受けられる福祉サービスが異なるため、自身の状態に合った支援を受けるためにも、適切な申請と区分の見直しが重要です。
障害のある方が自立した生活を送るためには、制度を理解し、適切なサポートを受けることが大切です。社会全体で障害を持つ人々を支える環境を整えていくことが求められています。